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デザイン会社の社長の本音、教えます。[面接必勝法 その4]

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出し惜しみをしないこと

ここで言いたいことは、一つ。履歴書には、出し惜しみせず、躊躇せず、趣味からバイト経験まで、ありったけのことを書き込みましょう! いいんです。こんな些細なことは書いても意味がない、と、勝手に止めないでください。恥ずかしがることもありません。全部書きましょう。守るべきルールはたった2つ。「ウソは書かないこと」そして「ちゃんと読める大きさの字で書ける範囲にとどめること」、それだけです。というのも、あなたのどんな経験や趣味が面接官の心にひっかかるかわからないからです。あなたは、これから受けようとする会社がどんな分野の仕事をしているのか、今度採用する人にどんな仕事をやってもらおうとしているのか、わかりますか。面接官が最近何に興味を持っているのか、わかりますか。わかるはずがありませんよね。だから、いろいろ書いた方が得に決まっています。

舟から海に向かって、釣り竿を3本垂らすより、10本垂らした方が釣れる可能性が高い。単純に、確率論の問題です。事実、履歴書のどこにもピアノのピの字も書かれていなかった人が、いろいろ踏み込んで話してみると、子供の頃にピアノを習っていて、学生時代はキーボード担当で仲間とバンドをやって遊んでいたなんて話が突然飛び出してきたことがありました。あっ、そう。なぜ、履歴書に書かなかったの? と聞いてみると、もうだいぶ昔の話ですし、大して上手くないのでという、なんとも遠慮がちな返事。こちらは、長年、デジタルピアノやキーボードの販促物を制作してきたので、ピアノというと、アンテナがぴんと立ってしまうし、まして男性だと珍しいのでついつい前のめりになりがち。どこかのCMじゃないけど「早く言ってよぉ」と、苦笑いしたこともありました。学生時代の趣味、習い事、ちょっと興味を持ってかじったこと、アルバイト、部活、ボランティア、好きなアーティストの追っかけ、ちょっとマニアックな収集品などなど、思い切って履歴書に書いてみましょう。下手な鉄砲も、なんとやらです。でも、くれぐれも約束事だけは守ってくださいね。「ウソは書かないこと」そして「ちゃんと読める大きさの字で書ける範囲にとどめること」。

できるだけ具体的に答えよう

あなたが大好きな彼から週末のデートに誘われたとします。「この週末にさ、横浜の街をあちこち散歩して、きれいな景色の見える喫茶店でケーキでも食べて、夜、一緒においしいご飯でも、どう?」。あなたにとって、それは&それは、うれしいオファーかもしれませんが、言われた内容を反芻してみても、いまいちピンとこないと思いません? なぜだか、わかりますか。ズバリ、具体性に乏しいから。「この土曜日にさ、横浜の元町から外国人墓地まで散歩してみない? 紅茶ケーキのおいしい十番館っていう店があるから、そこでお茶して、夜は中華街でバイキングとか、どう?」誘われるなら、こう言ってもらった方が、はるかにイメージがはっきりしてくるでしょう。二人並んで山手を歩く映像まで浮かんできそうです。グーグルマップで、元町からの散歩道をあれこれ探したり、中華街のバイキングの人気ランキングを検索するのも楽しみですよね。面接で質問された時の答え方も、実は同じなのです。

「趣味に読書と書かれていますが、どんな本を読みますか?」「幅広くいろいろな本を読みます」「というと?」「小説からビジネス書、ドキュメンタリーものも。」「そうですか…。では、好きな作家は?」「本屋で都度気に入った本を買うので、特にこだわりはありません」「はあ。」で、話は終わってしまいます。具体性のない話は、のっぺりしています。つかみどころがありません。だから、会話を広げようにも、どこをきっかけに広げていいのかわかりません。また、伝えたいという本人の意欲や熱意も感じられないので、聞く側の気持ちも冷めてしまいがちです。もっと辛辣に言うなら、具体性のない話には「作り話」や「うそ」のニオイさえします。実際には読書なんか好きじゃなくても、一般論でお茶を濁すことなら誰でもできるからです。

だから、あなたが、もし面接で質問をされたら、できるだけ具体的に答えるように努めてください。好きな食べ物は?「果物」ではなく「リンゴ」、それも「王林か、ふじ」もっと言うなら「青森産の」と、具体性を色濃くしていくにつれて、イメージは鮮明になり、あなたの発言は届き、残ります。まあ、それ以上、「生産農家は誰で」「母系がゴールデンデリシャスで」と詳細に突っ込んでいくと、だんだんオタク色が強くなっていくでしょうが、ノープロブレムです。オタクの熱意と情報量、この段落のテーマで言うなら「発言の具体性」には、圧倒的な力がある。あなたも、圧倒的な力のある返答で、面接官と実りある会話を楽しんでください。

忙しいのは大歓迎でしょ

「残業はどのくらいありますか」「土日に出ることは多いですか」「だいたい会社を出るのは何時くらいでしょう」そういう質問をする人が少なくありません。たいがいは遠慮がちにではありますが。まあ、致し方ないかもしれませんね。広告業界というと残業の多さで定評があるようですし、近頃は業界を問わず、ブラックな会社もあるようですから、一応確認しておかないと、と思うのも無理からぬことです。こと弊社に限って言えば、土日で出ることはほとんどありません。自分がまだ若かった昔より残業も本当に減りましたね。社長としては、善し悪しなのですが。それはそれとしまして。。。あえて批判、誤解を恐れず言うならば、若い時は忙しく働かなければダメです。忙しくなることから逃げ回っていては、絶対にいけません。

ご存じの通り、この仕事には常に締め切りがあり、みんなで仕事をするとはいえ、自分の力とがんばりだけで完結しなければならない領域が必ずあります。人に頼れない、自分だけで仕上げなければならない部分です。この仕事を始めたばかりでまだ若かった頃、締め切りというものは大変な重荷でした。誰でも同じでしょう。締め切りが近づいて、まだ形になっていないと、言うに言われぬ不安に押しつぶされそうになる。だから、自分としては仕事の量はなるべく抑えたいわけです。それにいい加減な仕事はしたくないし、全力投入して完璧が仕事をするには仕事量をコントロールすることも大事。などど、都合のいい理屈も浮かんでくる。でも、会社はそんなことはお構いなし。どんどん仕事を入れてくる。できるかできないかを考えている余裕などなくなるから、もう単純の無我夢中で目の前の仕事を片付けていくだけ。夜、会社を出る前に、明日やらなければならないことをA4の紙一枚、ひどい時は表裏に、箇条書きに書き出しておいて、それを翌日、仕上げては赤ペンで横棒を引いて消し、引いては消し、その繰り返しが地味に快感になってきて、うれしいやら悲しいやら、逃げ出したいやら。年末、お寿司屋さんの二階で忘年会をしている最中、ああ、やっとこの忙しさから解放される。それにしても、一年よくやったなあと思ったら、涙が出てきて、一人ぼうっと表通りのネオンを見ていた、などということもありました。若かったなあ。

そう、若かった。今、思うのは、若かった時に、そうした苦しい(大したことではありませんが)経験をして本当に良かったということ。なぜなら、仕事のキャパシティというものは、黙っていては増えないのです。やる気だけでも広がりません。仕事をたくさんこなし、無理な負荷をかけ、もうダメだと音を上げるような重荷を背負って、というか、仕方無く背負わされて、そうしてやっとのことで締め切りになだれ込む。ホントかよと思うような経験を積み重ねながら、仕事のキャパシティというものは徐々にふくらんでいくものなのです。間違いありません。それでも、毎回、もう今度は無理かもしれないと弱気になる。落ち込む。でも、そんな谷底で聞こえてくるのは、「でも、この間ももう無理っていう仕事ができたんだから、今度もできちゃうんじゃないの?」という悪魔のような天使のささやき。いや、天使のような悪魔のささやきか?ま、どちらでもいいけれど、こうして、屋台で買った小さなゴム風船のようなキャパシティは、もう割れるかも、もう割れるかもという心の悲鳴をよそに、ぐんぐん大きな器になり、「オレは1回も仕事で穴を開けたことはないんだから」という最終兵器のような自信とともに、この仕事をやっていく上での、かけがえのない宝物となっていくのです。キャパシティが増えれば余裕ができる、余裕ができてこそ、いい仕事もできると思いませんか。自分の限界に挑戦してきた人は、無理だとか、できないとか、まず口にしません。もう無理です、できません、とすぐ言う人は、それをしてこなかった人です。あっ、愚痴ってしまいました。オフレコです。逃げないこと。隠れないこと。予防線を張らないこと。忙しいのは大歓迎。そんな心構えでこの世界に入ってきてください。